2021/8/13小笠原近海の「福徳岡ノ場」で爆発した海底火山。
そこから生まれた軽石が沖縄に漂着し問題化したのが、その2か月後。
それ以来、沖縄は軽石の撤去、利用に振り回されています。
沖縄県の軽石に対する取り組み
沖縄県のHP内の軽石問題対策会議ページ内、開催状況2022/5/12現在の最新PDFファイル第7回会議資料(PDF:1,876KB)から数値を抜粋させていただきます。
2/15 | 35672㎥ |
3/18 | 54763㎥ |

約1か月で20000㎥の軽石を回収したってことだよね。でもどれぐらいの量の軽石が漂着しているんだろうか?
PDFファイルを読み込んでいくと、ヒントになる一文を発見。
・回収状況及び各土木事務所の回収業務発注状況回収予定量 102,240立方メートル

回収予定量102240㎥で、3/18時点で54763㎥ってことは、約半分の軽石を回収しましたってことか。3/18の時点で。
半分?


まだ回収予定の半分の量が終わっただけなの???
ゴールは遠いな………

せめて有効に利活用したいですね。
軽石の利用方法要約

漂着の当初は軽石が安全な物かどうか? その確認作業が大切だったよね
詳細は沖縄県の公式サイトにリンクが貼られています。確認したい方はこちらからどうぞ。
全部読むのは大変なので、要約してここにまとめますね

- そのまま使っても有害な鉱物は含まれていない
- 農地に使用するときには塩抜きをしなくてはならない。 ⇒ 軽石から塩分が出てくるので土壌の性質が変わってしまうかもわからないので
- 沖縄県がHPで募集した軽石の利活用方法がまとまってサイトに掲載されるようになりました ⇒ 検討作業にこの中の4つが入っていますが、どれもまだ実施されていません
- 唯一製品化されて販売されているのが「軽石シーサー」660円です。
①漂着軽石の特性について(参照 : 令和4年3月1日 沖縄県農林水産部)
県内5か所からサンプリングして組成を調査。おおむねで一致。
沖縄県内に漂着した軽石は同一由来のものと判断。
次に、県内でサンプリングした軽石と、福岡徳の場近くで採集した軽石の組成データを比較。
分析方法がそれぞれで異なることからほぼ同じ特徴を有するが同一のものと断定するまでには至っていない。
軽石の成分から分かること
○軽石全体の組成は、これまでの噴火と同様のトラカイトという組成でした。トラカイトは、アルカリ成分が多く(Na2O酸化ナトリウムとK2O酸化カリウムの総量が10%前後)、シリカ(SiO2重量%)成分が60-70%の火山岩です。○福徳岡ノ場や硫黄島のマグマはアルカリ成分が多い特徴的な組成をしています。
参照元: 沖縄県HP内、軽石の成分分析について における漂着軽石の特性について(令和4年3月1日:農林水産部)(PDF:146KB)
2023/3/4現在、上記リンクが切れてしまいました。

2021/12月に記事を書いた時も農地に使用するのは「ちょっと待ってね」状態だったけれど、そこから半年でよりわかってきたことってないのかな?
「こうしたら、塩分濃度が下げられるよ」って書いてるPDFファイルが公表されています

②漂着軽石の塩分除去試験
ざっくり言うと、採集した軽石の倍の重さの水に24時間浸す実験を1サイクルとし、これを繰り返していきます。
- 1サイクル終了、塩分濃度が0.553%
- 2サイクル終了、塩分濃度が0.134%
- 3サイクル終了、塩分濃度が0.034%
- 4サイクル終了、塩分濃度が0.011%
- 5サイクル終了、塩分濃度が0.005%
- 6サイクル終了、塩分濃度が0.003%
- 7サイクル終了、塩分濃度が0.001%
3サイクル終了時点で、沖縄県内の河川水や地下水と同レベル
5サイクル終了時点で、塩分0.01%以下で軽量コンクリート骨材の日本産業規格(JIS規格)にも適合するレベルになった
参照元 : 沖縄県HP内沖縄県への軽石大量漂着・漂流について内の軽石の塩分除去試験の結果について(PDF:170KB)ファイルから引用

たっぷりの水に浸して24時間キープ、その後水を入れ替えてさらに24時間。そしてその後にもう一度水を入れ替えて24時間、合計3日間浸け続けると県内の河川水や地下水と同レベルの塩分濃度になるってことだね
でもPDFファイルの最後にはいつものようにこう書かれています

なお、実用に際しては、軽石表面を軽く洗浄するだけではしっかりとした除塩はできておらず、後からしみ出てくることに留意する必要がある。塩分条件がシビアな利活用の際は、電気伝導率計や定められた分析方法などを用いて、用途に適したレベルの塩分除去がなされたかを確認した上で軽石を利活用することをお勧めしたい。

一例の実験結果に過ぎないってことだね
ひとつの目安ぐらいに考えて、使う時はオウンリスクで使ってねってスタンスはそのまんまだね


冒頭のまとめを抜粋させていただくと、
分析の結果、6地点全てにおいて軽石の溶出量試験及び含有量試験の値が土壌環境基準を満たしていました。このことから、漂着軽石の有効利用に際しての環境安全性に問題はないと考えられます。 また、軽石の海水漂流に伴う塩分の影響及び、利活用を念頭に置いた、真水による塩分の洗浄効果を確認するための試験を実施しました。その結果、真水により十分洗うことによって、軽石に含まれる塩分濃度をかなり下げることが可能であることが分かりました。
環境省の調査では軽石試料に10倍量の水を加え、6時間振とう後に溶出した塩分濃度を最初に測定。
水を入れ替えて再び軽石試料の10倍の水量投入。再び6時間振とうし溶出した塩分濃度を最後に測定。
その結果塩分濃度は1/10以下の値に減りました。PH値はほぼ変化してませんでした。

ふむ………。よく洗ったら使えるんだね
PDFファイルを読んでいるとそう思えるけれど、想像してみよう

土のう袋いっぱいの軽石を畑に投入しようと思ったら、土のう袋いっぱいの軽石の10倍の量の水が入る桶を準備しないとダメで、そこに水を入れたら入れたで6時間振とうさせるんだよ。
桶を持って、6時間揺らし続けるのって無理じゃない?
浸けとくだけの場合は何時間でOKかの実験データはないし、
最初の沖縄県が発表しているデータは浸けとくだけでいいし、水の量も軽石の倍の重さでいいから、そんなに大きな桶を準備しなくても良い。これなら準備できそうだけれど、なんせ3日間かかるので面倒くさい。

「塩抜き」って面倒くさいね
沖縄県では農地に利用するだけではない別の利用方法を広く募集していました。ようやくそれがまとまりつつあります。

③軽石利活用アイデア集
2022/3/2に開設されたこのサイト、「軽石利活用アイデア集」は順次アップデートされていくようです。
現在、掲載されている利活用方法を挙げてみると、
- 吸着剤を結合させて濾過材として陸上養殖などで利用
- 建設発生土と混合した盛土材
- 建設発生土と混合した埋立用土
- 軽石を粉砕して赤土と混合した左官材
- 軽石を粉砕して赤土と混合した煉瓦
- 加圧成型した軽石ブロック
- 赤土と混合した平板ブロック
- 赤土流出抑制用植物の土壌改良材
- コンクリート舗装材
- 屋上緑化用資材
- 土壌改良剤
- 箱に軽石を格納し、魚礁にする
- 屋根の断熱資材
- 箱状の容器に入れ屋上などの建築用断熱素材として利用
- 耐火耐熱材
- タイル用・窯業用原料
- 屋上緑化などの日本芝床材(土壌改良材)
- 教育用に学校へ配布
- 暗きょ排水工で濾材として利用
- お土産品や前売り券とのセット販売
- ゼオライト化した軽石の汚染物質除去材等への利用
- 軽石を使った汚れ除去ブラシ
- 自然科学を学ぶ教材
など、2022/5/12現在で41件のアイデアが紹介されています。
沖縄県で利活用を検討する事業として上記の中から4件を選定し、現在、検討作業を進めていると、書かれていました。その4件がこちらです。
- 農業用土壌改良材(野菜や作物栽培)
- 農業用園芸資材
- 赤土流出防止濾材(フトン籠)
- 農業用暗渠排水濾材
④軽石シーサーの誕生
鳥取県にある「モルタルマジック」という会社が造る特殊な接着剤で粉砕した軽石を固めることに成功。
2022年1月から販売を開始しています。
[blogcard url="https://www3.nhk.or.jp/news/html/20211223/k10013400561000.html"]
現在はヤフーショッピングのみ対応しています。
売り上げの10%をダイビング、漁協団体さんに寄付しているそうです。素晴らしい。
まとめ
2021/12月にまとめ記事で書いたことがどれぐらいアップデートされているかな? と調べました。

約半年経過しても有効利用されているとは言い難い現状だね
商品化されているのは軽石シーサーのみで、残りはまだ検討中


農地に利活用するためには面倒くさい塩抜きの手順を踏まなければならないし、それをしたからといって農地に何が起こるかはオウンリスク。わざわざ進んでリスクを取りに行く農家の人がどれほどいるのかな?
回収予定の半分ほどの量しか回収できていないという数値には驚きました。
誰よりも軽石を見つめてきたと思っていたので、半年前に比べたらかなり少なくなったと思っていたから。
でも、このPDF資料の回収予定数値(2023/3/4現在リンク切れ確認)を出したのはいつのことだろうか?

資料が発表されているのが3/18だから、もっと前に調べられているはず。これからの季節は南風が多くなるので勝手に海に戻って、沖に流れてなくなってしまう軽石が増えてくるんじゃない?
なので、今後の季節は南風に乗って、勝手に軽石が海に流れ出ていくことが期待できる季節です。
回収予定の残り半分の軽石がどれほど消えていくのかわかりませんが、3/18時点で回収した54763㎥は今後有効に利活用できたらいいですねー。